日本銀行 我が国に迫る危機

※ 毎朝、5分ほどで読める書籍の紹介記事を公開します。

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

まえがき

 国際金融界や国際基金からは、日銀の金融政策など対して厳しい見方が示されるようになっています。英国の経済誌『The Economist』のネタにされ、IMFから公表される声明も辛いものです。

 世界の経済・金融情勢は長らく続いた「低インフレ・低金利」局面から「高インフレ・高金利」局面へと様変わりし、その状態はしばらく続くと思います。日銀は今や、我が国の先行きを大きく揺るがしかねません。

 岸田政権が黒田総裁の後任として、経済学者の植田和男氏を指名しました。これまでの交代時には、奪い合いが発生していましたが、今回は譲り合いが起きたようで、かなり難航したのではないかと言われています。

 国民向けにはいかに口を閉ざし続けているのは、深刻な事態と認識しているかの裏返しではないでしょうか。

書籍情報

タイトル

日本銀行

我が国に迫る危機

第1刷 2023年3月20日

発行者 鈴木章一

発行 (株)講談社

ブックデザイン

装幀 中島英樹(中島デザイン)

図版制作 (株)さくら工芸社

印刷 (株)KPSプロダクツ

製本 (株)国宝社

ISBN978-4-06-531510-1

総ページ数 286p

著者

河村小百合

 株式会社日本総合研究所調査部主席研究員。財務省財政制度等審議会財政制度分科会臨時委員。

 国税庁国税審議会委員。厚生労働省社会保障審議会委員。内閣官房行政改革推進会議構成員などを歴任。

出版

講談社現代新書

量的緩和の効果

作者: ニッキー

 2001年、日銀は初めて、短期の政策金利をこれ以上は下げられないという「ゼロ金利制約」に直面しました。巨額の資金を投じることで、貸出が増えて経済効果をもたらすかもしれないということで、量的緩和に踏み切ったのです。

 しかし、金利がプラスの時代と同じ動きはせず、民間銀行の貸出は伸びませんでした。社会全体の経済活動が活発化することもなく、物価も上がることもなく、デフレが長期化する状態が続いたのです。

 流動性の供給を通じて金融危機を収束させる効果はありましたが、金融危機時には相手の経営状態や返済能力について相互不信状態に陥るため、市場での資金不足舎と資金余剰者が効率的に取引することが難しくなります。

 中央銀行が民間銀行向けに供給しても、不況時のときは貸出が増えないということが、ゼロ金利政策を試みて、世界で初めてわかったのです。

買い入れで株高を演出

UnsplashChris Liveraniが撮影した写真

 白川総裁時代にETF買い入れが始められ、黒田総裁就任後に、2%の物価目標達成のため、大幅に拡大して実施するようになりました。

 事実上、日本の株式相場の上昇を事実上、支えてきました。

 株価が実力以上に押し上げられて、各企業の経営に対する株主の厳しいチェックが働かなくなりました。ETFからの収益は金利がついていない国債に代わる経常利益を支える主要な柱と化していますが、株価が堅調だからこそ可能になっている話です。

 黒田日銀が、ETFの買い入れ残高を積み増す一方で、残高調整には一切、取り組もうとしていません。株式相場の押し下げと、財務運営上の赤字転落を恐れていたのでしょう。

 いずれこうなる時代を想定し、世界の主要中央銀行では、コロナ禍のような未曽有の危機に襲われても、株価が大幅に下落しても、日銀のような株のETFの買い入れには手を出していません。

国外への資金流出

Image by Miguel Á. Padriñán from Pixabay

 資本移動を自由に行える開放経済下で、自分の国の財政運営が危なくなってきたと思うようになれば、人々は不安に駆られていろいろな行動に出るようになります。

 国債を保有している銀行が経営破綻してしまうかもしれないと考えて、預金を出来るだけ引き出そうとしたり、お金に代わるものに置き換えることもします。

 一番多いのは、信用のある他の通貨に交換しておこうという動きです。仮想通貨や暗号資産のビットコインなどに変える方もおられるでしょう。

 国内の資金が国外に逃げ出し止まらないのであれば、国の財政や経済運営の継続ができません。

 危うくなれば、中央銀行が政策金利を出来る限り引き上げて、資金流出を止めようとするのが普通です。それでも止まらなければ、国際的な資本移動規制をかけるよりほかなくなります。

 ごく最近アイスランド、キプロス、ギリシャの3か国で財政運営が行き詰まってしまう事態に陥いりました。新興国だけで起きている話でもないのです。

一般人向けの説明の充実

Image by L Gould from Pixabay

 欧米の主要中央銀行はみな、金融にあまり縁のない一般国民向けの説明を強化しています。リーマン・ショック以降に金融政策が大きく変わると、様々な資料を作成・公開をしているのです。バランス・シートの説明といった初歩的なこともホームページに掲載しています。

 日銀は一般人向けの資料がなく、円安や株価といった表面的なことしか受け止めることができていないようです。

 どういった経緯で、この政策が組まてれいるのかの説明は必要です。政策意図の透明性を高め、国民との意思疎通の在り方を大きく変えていただくことを、新総裁には期待しています。

 政府の健全な財政運営は、中長期的な物価安定を実現するうえで不可欠なはずです。

感想

サイト管理人

サイト管理人

 財政が破綻することはないけれど、不景気だと実感をしていれば、銀行も企業にお金を貸しにくいし、政府の思うように物価も上がりません。

 よく煽るように国債赤字と書かれますが、どういった数字なのか、どういうことが言えるのかの資料を発信して、国民に正しい理解をしてもらうことから始めましょう。ということだと思います。

 それこそ貸し借りのバランスを説明するバランスシートを一般人にもわかる資料を作ったほうがいいのでは?と言ってます。

 透明性を示さずに、円の信頼性を失えば、米ドルでクレカ決算をする日本国になるかもしれません。為替リスクをとってまで、通貨を変える人は言い過ぎのような気もしますが、米国株の積立投資やギャンブルと変わらない暗号資産をやる人は増えていることは事実です。

 そういうことも、あるかもしれません。新書は極端ですが、著者の思いが知れて考えさせられます。

 子どもの金融の教育が始まりましたし、国民の理解が追いついていって、一般人がお金との向き合って景気思想が安定することで、物価が安定することを期待したいです。

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