※ 毎朝、5分ほどで読める書籍の紹介記事を公開します。
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
目次
はじめに
この「回顧録」には、長期政権の秘密とともに、「地球儀を俯瞰する外交」を通じて信仰を深めた世界の指導者の人物月旦とエピソードがふんだんに盛り込まれています。
中国の外交は将棋に同じと例え、ドラルド・トランプ、バラク・オバマ両米大統領評は膝を打ちます。ロシアのウラジーミル・プーチン評も味わっていただければと思います。
この書籍は22年1月にはほぼ完成していて、まもなく出版の運びになっていました。しかし、安倍派会長として政界に復帰しようとしていたため、内容が機微に触れるとのことで躊躇されていたのです。そうしているうちに不幸な事件が起きました。
安部晋三の「回顧録」は、歴史の法廷に提出する安倍晋三の「陳述書」でもあるのです。できるだけ多くの人に読んでいただくことを念じて止みません。
書籍情報
安倍晋三 回顧録
第1刷 2023年2月10日
聞き手 橋本五郎
聞き手・構成 尾山宏
監修 北村滋
発行者 安部順一
発行 中央公論新社
DTP 市川真樹子
印刷 大日本印刷
製本 小泉製本
ISBN978-4-12-005634-5 C0031
総ページ数 472p
中央公論新社
アベノミクス始動
アベノミクスについて聞きます。2012年11月15日、「日本銀行と強調して物価上昇率を示し、その目標達成のため、無制限に緩和していく」と表明しました。この講演がアベノミクスの初めての表明です。
リーマン・ショック、東日本大震災と起きたため、雇用情勢も悪く0.6%程度に落ち込んでいました。貨幣が市場に出回らなかったため、デフレがずっと続いていたのです。
当時は、非主流の館得方なので、エコノミストからさんざん叩かれました。当時の日本経済団体連合会会長からも、無鉄砲な政策と言われています。そこまで言われてしまい、経済財政諮問会議の議員から外れてもらったわけです。
最大の目的は雇用の改善でした。マクロ経済学にフィリップス曲線というものがあります。物価上昇が高まると失業率が低下し、失業率が高まると物価が下がっていくものです。
ISによる日本人人質殺害事件
主にイラクとシリアにまたがる地域で活動していたイスラム過激派組織(ISIL)による日本人人質事件が2015年1月に急展開し、14年にシリアで拘束された湯川遥菜さんと後藤健二さんが相次いで殺害されました。政府は現地対策本部を設置して救出を目指していましたが、かなっていません。
何とか救出しようと交渉を重ねました。特にヨルダンのアブドラ国王に尽力してもらっていたのです。ヨルダンもグンのパイロットを人質にとられていて、国王は、ヨルダン国民と同じように日本人2人についても先方と交渉すると言ってくれました。
カナダのジャスティン・トルドー主相は身代金を絶対に払ってはいけないと主張しているけれど、各国が武装組織に人質を取られた場合は、それなりの手法で交渉しているのが実態です。
国際的なテロ集団に関しては、警察庁が情報や対処のノウハウを持っていたので、現地にそうした専門家を派遣しました。いろんなツテをたどりながら、やることはやりましたが、奏功できなかったのです。
13年のアルジェリア人質事件とこの時の教訓で、15年12月に外務省と警察庁が連携したCTU-Jを設置しました。中東など情勢が不安定な地域での情報収集能力を高めて、実際の救出オペレーションを取り組ませることにしています。CTU-Jは、その後、シリアで拘束されていた安田順平氏の解放にも大いに力を発揮しました。
秋田犬「ゆめ」とともに出迎えたプーチン
第1次、2次内閣を通じて、プーチン大統領と計27回会談しています。イメージ通りの人物ですか。
プーチンはクールに見えるけれど、意外に気さくで実際はそれほどではありません。ブラックジョークも好きです。
16年5月に、北方領土問題を「新しいアプローチ」で解決することで合意しました。極東の産業振興や、エネルギー、先端技術など8項目の経済協力プランが柱です。この時から、北方領土問題を解決して平和条約を結べば、ロシアの利益につながりますと伝えていく作戦を始めます。
プーチン氏の理想は、ロシア帝国の復活です。ペレストロイカやグラスノスチを推進し、ソ連を崩壊に導いたミハイル・ゴルバチョフ元大統領を失敗者として捉えていました。諜報機関(KGB)の一員として活動して、ベルリンの壁が崩れていく大きな挫折を経験しています。ウクライナ共和国の独立も、彼にとっては許せない事柄です。
バルト三国のある大統領は私に「ロシアにウクライナを諦めろというのは無理だ。これからウクライナの領土を侵食しようとするだろう」と述べていたのが印象的です。
7年ぶりの訪中
「競争から協調へ、日中関係を新しい時代へと押し上げていきたい」と表明しました。日中両国企業の経済協力など強調路線に踏込んだ背景は何だったのでしょうか。
中国は非常に戦略的な外交を展開する国です。我々も対中外交については、綿密なプランを持たなければなりません。
中国の軍事的台頭は、防衛白書では「懸念」となっていますが、「脅威」と言わざるを得なくなっています。
なので、多国間の防衛協力を進めました。自由で開かれたインド太平洋構想を唱え、安全保障関連法を整備し、日本の信頼を高めて情報を入手しやすくする特定秘密保護法や、テロ等準備罪などを実現したのです。共通の価値観を基盤とする貿易ルールづくりを進めてきました。
日本経済が成長していく上でも、中国との関係を断つことはできません。安全保障上の課題をマネジメントしながら、経済面では中国の市場的価値を日本のチャンスに変えて行くことが、政治の技術です。
謝辞
36時間にわたる安倍晋三さんのインタビューでした。
安部さんにとってムッとするような質問が多々あったかもしれませんが、その方がより事実に近づくと考えたのです。
安部さんは自分の記憶を思い起こすだけでなく、首脳会談の記録や新聞記事などを事前に丹念に調べて誠実に対応してくれました。
多くの人に読んでいただき、忌憚のないご批判を受けることによって、『安倍晋三 回顧録』はいっそう鍛造品になるに違いありません。
感想
サイト管理人
緊張性大腸炎を患っていながら、長いこと総理大臣の座についていました。自然災害に、リーマン・ショックと大変なときに、トップを担っていた人です。
ベストセラーになっています。
安倍元首相は、亡くなってから偉大な政治家だったとメディアでも報道されましたが、以前は「~問題」として何かと叩かれていた印象があります。
芸術家にも亡くなられた後に人気が出る方がおられますが、政治家でもそんなことが起こるとは思ってもいませんでした。
芸術家は不摂生で病気を患うパターンですが、安倍さんの場合は他殺です。
1人の命は脆くて重いと感じました。
この本には、考え方の違う海外との交渉について、さまざま回答してくれています。メディアで叩かれ続けているのを聞いていれば、一緒になって批判したくもなるものです。けれど、本来なら双方の意見を聞いて、考えなければならないことだと思います。メディアだけを鵜呑みにするのではなく、本書などを読んでから批評してみてはいかがでしょうか。
下にリンクを貼っておきますので、本書の購入を検討してみて下さい。
購入リンク
紙
※amazonの商品リンクです。画像をクリックしてください。
電子
※amazonの商品リンクです。画像をクリックしてください。