数字のセンスを磨く

※ 毎朝、5分ほどで読める書籍の紹介記事を公開します。

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

はじめに

 私たちは生活する上で数字を扱わなければなりません。

 避けるべきなのは、数字が物事を単純化していることを「忘れてしまう」ことです。数字が作られるプロセスを忘れてしまうと、数字を間違って分析してしまうことにつながります。

 「数字をそのまま受け入れる」ことも、「数字を過度に受け入れない」ことも、両方とも想像力を欠如しているのです。

 「数字のセンスを持つ」ことは数字にできること、できないことを分別するという意味で使います。

 本書が、そのセンスを磨くひとつのきっかけになれば幸いです。

書籍情報

タイトル

数字のセンスを磨く

データの読み方・活かし方

第1刷 2023年2月28日

発行者 三宅貴久

発行 (株)光文社

本文図表作成 デザイン・プレイス・デマンド 

装幀 アラン・チャン

印刷 堀内運札

製本 ナショナル製本

ISBN 978-4-334-04648-4

総ページ数 296p

著者

筒井淳也

立命館大学産業社会学部教授。専門は家族社会学、計量社会学。

出版

光文社

数字の魔力

UnsplashBernard Hermantが撮影した写真

 私たちは通常、ある概念をそれと関連する概念と関わらせて理解します。

 この傾向は、自然言語よりも数字において顕著です。数字には奇病な魔力があります。

 数字が表示されると、背後にある複雑な計算や作業が隠れてしまうのです。シンプルで解釈の余地がないものとしてみえてしまいます。

 すうじそのものについては解釈の多様性がないようにみえます。そのことによって、その力が強くなっていく特徴もあるのです。

 「10」といわれれば、全ての人がそれを「10」だと理解します。実際には、「10」の背後には複雑な情報が絡み合っているのにです。

偶然を利用する

UnsplashCarlos Felipe Ramírez Mesaが撮影した写真

 人為的偶然は人為的に発生するものですから、「対処すべき偶然」というよりは「利用される偶然」です。

 あえて偶然を人為的に発生させる場面として「結果に影響しないが、とりあえず決めておきたい」ケースです。スポーツでの先攻後攻やコートサイドを決めるときにコイントスなどで決める場合が当てはまります。

 私たちが意図的に利用したいケースとしては「決定を誰のせいにもしたくない」ときです。入試は実力と運を試します。合格者を抽選だけで決めることは例外的です。実力の根拠を問うことが難しい場合に、偶然に委ねることがあります。その効力は、「文句が出ない」ようにすることです。

 私たちは偶然を、「強制納得装置」として用いているのです。

データ分析方針

Image by Photo Mix from Pixabay

 非構造化データの分析においては、テキストマイニングやパターン認識など、規則を見出すこと自体が目的です。分類のための統計手法や、AIを使って多くの画像から一定のパターンを見出すラーニングの手法などがあります。

 構造化データの分析手法は「要約」「予測」「因果」の3つがよくみられる方針です。

 「要約」とは、データに含まれる情報を簡潔に表現・記述することです。ですが、実際にはそんなにシンプルになりません。

 勤務経験を例にしてもそうです。勤務経験が時間あたり賃金に影響しているとして表現されることがあります。勤務経験数が計算に含まれ、賃金が勤務経験の2乗に比例するなどの計算式を追加することになります。1つ1つの要素に当てはめて、式はもっと複雑になっていくのです。

固体をどう扱うか

Image by Michal Jarmoluk from Pixabay

 個体とは、「男性」「正社員」「大卒」「幸福な人」といった特性、集団を指すものではありません。個人であれば、「鈴木一郎」といった個々の人間をさします。

 地域ですと、「福岡市」は個体ですが「県庁所在地」「人口100万人以上の都市」は違います。

 個人で考えると、未知の領域が見えてきます。賃金で言えば、学歴、資格、企業規模、地域、性別といった要因が考えれるのです。それと、観察時の景気も関係するかもしれません。

 「正社員」「勤続年数」などの「容れ物」別で観測したとき、残差が生まれたなかに未知の要因がたくさん含まれています。

おわりに

 これまで多くの一般向け統計本・調査本が出版され、人気を博してきました。

 なぜか「統計のウソ」を暴く本が売れるという、不思議な状況があったわけです。

 どんなに完全にみえるデータや分析についても、「いちゃもん」をつけることは可能です。

 工夫をしても、バイアスや誤差が必ずデータに生じます。

 しかし、肝心なのはウソを暴くことではありません。データの作成や分析を特定のやり方で行う事、あるいは提示されたデータや分析を読み解く際の限界と意味を、その都度丁寧に考えることなのです。

感想

サイト管理人

サイト管理人

 数字をみて、考えることをしないと、極端な考え方になっているかもしれません。

 やっぱり自分で考える必要があるようです。どういった意図があるのか、いろんな要素を考えられると、データから見える世界が広がるのだと思います。

 下にリンクを貼っておきますので、本書の購入を検討してみて下さい。

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