ネット右翼になった父

※※ 毎朝、5分ほどで読める書籍の紹介記事を公開します。

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

序章

 父と、本音で腹を割って話したことがありません。看取るまでの数年は、父の言葉「絶対に相容れない価値観」を感じたことで、私は心を閉ざしてしまっていました。

 父が小さな火葬場で焼かれ、二度と父を目にすることはないのです。その事実が感情を揺さぶり、人生でかつて経験したことない嗚咽となって溢れ出ました。

どうしても好きになれなかった。全然、好きになれたことがなかった。けれど、大事な人だった

偽りのない気持ちです。

 息をしなくなった父を前に「本当に、これでよかったのか?」という自問自答が、2年半以上にわたって自分の中で反響し続けることになるとは思いせんでした。

書籍情報

タイトル

ネット右翼になった父

第1刷 2023年1月20日

発行者 鈴木章一

発行 (株)講談社

装幀 中島英樹[中島デザイン]

印刷 (株)KPSプロダクツ

製本 (株)国宝社

ISBN 978-4-06-530889-9

総ページ数 244p

著者

鈴木大介

文筆業。

 社会問題をテーマとした書籍を多数執筆しています。

出版

講談社現代新書

右傾化は「孤独の病」

Image by Sabine van Erp from Pixabay

 飲みの席での共通の話題が「リベラル政党への疑義」だったのではないかと推論を立てました。同じ傾向の思想を持つ狭い集団の中で対話するうちに、父も右翼派になってしまったのではないでしょうか。

 生前に父の書斎でみた「民主党よ、どこまで日本を壊すのか」といったタイトルは、死後の書斎には残されていませんでした。友人から借りたものだから返したのかもしれません。

 狭い同世代のコミュニティで対話を重ねたことで、価値観の基準が右寄りに変質し、下地ができたところで右派コンテンツに晒されて、ネット右翼コンテンツの消費にまで至ってしまう。ありそうな話です。

 孤独を埋めるように、極右・極左的思考、新興宗教、エセ科学的健康ビジネスなど、尖ったイデオロギーにはまってしまうことは、あらゆるところで起きています。

 宗教的な護憲やスピリチュアルにハマる女子と冷え冷えする彼氏など、パートナーシップを分断してしまうこともあるでしょう。

 インターネットなどで、右翼に偏った情報をだけを吸収できてしまう環境があります。父の場合は、その環境と「孤独の病」がもたらした結果だと考えているのです。

なによりキツかった母への無配慮

Image by Roland Steinmann from Pixabay

 「だから女は」母に対してではなくとも、女性である母の耳に届く距離でそう呟く父でした。

 そんな嫌いな父を毎月検査通院に付き添うのは、主治医の口から「抗がん剤が効かなくなってきた」といった言葉を、母ひとりでは聞かせたくなかったからです。

 ショックを受けた母に、父が傷つける発言をするかもしれないし、父と母の2人だけにしたくありませんでした。

あんたのためじゃない

父を前に、そう言葉にしました。父はその理由を問いません。けれど、限られた時間を生きていた父は、息子からの激しい拒絶をどう感じたでしょう。

母の思う父像との乖離

Image by Claudia Peters from Pixabay

 母は、父のことを振り返る中で、何度も首を傾げました。「大介の言うようなネット右翼なお父さんとは、どうしても一致しない」というのです。

 お父さんは、私とふたりのときは、とても穏やかで静かだったよ。大介は、お父さんにもっと私に対して優しく接して欲しいと願っていたようだったけれど、ふたりのときは穏やかな時が流れていたの

 父ががんを発症する前、ハンガリーからクロアチアを夫婦で旅をしていました。その間、喧嘩も言い争いもなかったといいます。

 子どもが茶の間に来ると、人が変わったように硬くなっていたようです。

 母が言うには、わがままも言わず、非常に孤独ではあったけれど、潔い死への向かっていった印象があるといいます。

 今のZ世代でこそ、父と子の距離が近く、親子で不自然なコミュニケーションが流れることは稀なのです。

分断の解消は生きてるうちに

Image by Dorothée QUENNESSON from Pixabay

 様々な価値観をもつ人が世の中にあふれています。しかし、そんな限定された価値で家族の等身大の像を見失うことは、もったいない気がするのです。

 父が多少ネット右翼だったとして、それが何だと言うのでしょう。

 評価基準になるのは、共有できる感性の部分であり、共有しやすいのは家族です。生前に、父の感性を受け入れてやれなかったと、悔やむ気持ちは尽きません。

 おとん、本当にごめんなさい。そして本当におとん、ありがとう。

感想

サイト管理人

サイト管理人

 まさかの、感動ものの書籍でした。

 ご家族だからこそ、高齢になった親の言うことや考え方を受け入れられないというのは、非常に多いケースです。

 息子に対してと、介護士に対してと、医者に対しての高齢者の態度は、全く違います。しかし、息子の前で急に硬派親父なったとしても、何年続くか解らない終末期医療だと思って、意見を受け入れる素振りをしてあげるといいかもしれません。

 本当に、「何いってんだ、こいつ」になると思います。そういうものなのです。

 残りの人生くらい、好きに生きたらいいと諦めましょう。

 まさに現代病に苦しんだ記録と、その向き合い方を示してくれる新書となっていました。

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