※読んだ本の一部を紹介します。
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
目次
はじめに
生物でも経済でも、繰り返しながら変わっていくことを特徴とします。
細胞は分裂を繰り返し、経済も安定的な構造から不安定になり新しい安定的な構造が生まれるのです。
周辺条件が限界を超えて変化すると、カタストロフと呼ばれる予測と異なる大きな変化を引き起こします。
一般的に「カタストロフ」は「崩壊」と考えられているが、局所的な変曲点なのです。
書籍情報
タイトル
現代カタストロフ論
経済と生命の周期を解き明かす
著者
金子勝
立教大学大学院経済学研究科特任教授。
児玉龍彦
東京大学先端科学技術研究センター、がん・代謝プロジェクトリーダー。
出版
岩波新書(新赤版)1953
エネルギーと動力の50周期
エネルギーの発展
●1769年、石炭を燃料にした蒸気機関ジェームズ・ワットの発明特許
●1784年、カートライトが力織機を発明
●1815年、ナポレオン戦争が終わり機械製綿織物工業が拡大
●1825年、ジョージ・スティーブンソンが蒸気機関車を発明
●1870年、ベントとダイムラーがガソリンエンジンの開発に乗り出す
●1884年、チャールズ・パーソンズが蒸気タービンを開発、電気エネルギーの概念が変わる
●1885年、ガソリン自動車を売り出す
●第二次世界大戦中、戦略自動計算のためノイマン型コンピュータの基礎がつくられる
●第二次世界大戦後、たくさんの電化製品が作られ大量消費文化が生まれる
50年周期で大きな産業構造の転換が起きるときは、古い産業利害は既存の仕組みにしがみつき、新しい産業利害に抵抗します。
新しい産業利害その優位を発揮できるようにして、古い産業を潰しにかかってくるのです。それは、経済や政治に大きな軋轢を引き起こします。
国際的に新しい産業を持っている国にキャッチアップしてくる新興国との間で対立が激しくなり、ときには戦争を勃発させるのです。
大きな改革は、合理的選択の結果として生ずるのではなく、対立や抗争を契機にして起きるものになります。
循環しながらも変化する
従来の景気循環論が失敗してきたのは、変化しながら周期を繰り返してきたからです。
1970年のオイルショックの景気が反転する原因は、国際収支の壁になります。原材料や設備財の一部の輸入が増加すると、金融引き締め政策を取らざるを得なくなるのです。
しかし、日本経済が国際競争力をつけてくると、貿易黒字となり対米貿易黒字も拡大しました。それによって日米貿易摩擦が生じ始め、円切り上げ圧力を受けたのです。
激しいインフレが発生し、貿易赤字とマイナス成長に直面します。
オイルショックを契機に、労働生産性基準原理に賃金ルールが従うように日本経済の構造が変わりました。賃上げを要求することが減り、インフレが収まって物価が低下していきます。
日本経済はカタストロフに向かっている
いまは、日本経済はカタストロフに向かう過程にいます。カタストロフが局所的な変曲点になるとすれば、エネルギーの転換から生じるのではないでしょうか。
ドイツは残る3機の原発の廃炉は変えずに、「再生可能エネルギー法」を定め、2030年には再生可能エネルギー80%、2035年に100%を目指すことを決めました。
日本は反対に電子力発電に頼ることを視野に入れてきたのです。原発の再稼働を追究し、系統接続を拒否するなどの再生可能エネルギーを発展させる妨害となっています。
電力会社の地域独占を打ち破り、発送電分離や電気の小売り販売などで、新電力にも平等な条件が必要だと考えます。日本も見習うなら新しいエネルギーにも目を向けるべきです。
情報社会とカタストロフ
これまでの50年間は、新聞やテレビが情報源でした。ネット社会へと移行をしようとしているなかで、「安定的な構造」のカタストロフをもたらしていると言えるのです。
今、問題となって現れているのは、ネット上での負の影響力です。理性と理論に欠けた短文で「感情」がもたらされてしまいます。「世論」となった分断はなかなか克服されにくいのです。
あらゆることの発展には緊張関係が存在し、次々と多様なイノベーションが起きている状態の方が安定しています。多様性が消えてしまうと、情報通信産業もカタストロフに向かうのです。
実は、自由と多様性を保証するセキュリティの技術こそ、産業活力を保証するものになります。
多様性を維持しつつ、プライバシーと情報人権の保護されることが重要です。日本は、その点でも非常に遅れているのではないでしょうか。
あとがき
財政危機、通貨危機、国民皆保険と年金の危機、人口減少、地方経済の崩落と、周期的なカタストロフが起き、重大な局面を迎えることになります。
「なんとかなるだろう」というぬるま湯的な正常化バイアスを誰も信じなくなり、不安と不信につながるのです。
50年に1度のカタストロフが来ると、人は生物の進化に答えを求めるようになります。進むべき科学の方向を正しくくみ取る努力が求められるのです。
カタストロフの状況では、消えているようにみえる複数の現実から再構築をし、システムの変革を可能にする現代のカタストロフ論を発展させることが必要になります。
感想
サイト管理人
カタストロフという視点で書かれた、大変な時代こそ次の安定した社会を生む転換期だという論でした。
小型の原発技術の物凄い有用性がある技術に対して、「原子力発電」の枠と一緒に語られ、否定的な意見が書かれている箇所などがあります。つまり、読んでいる人に結論を信じ込ませようと「嘘」になってしまっている部分があるのです。
カタストロフ論を展開するにあたって、極端に書かなければならず、事実ではない表現になっている点には気をつけてください。「こんなこともあるのか」と読み流すくらいがちょうどいいかもしれません。
けれども、気づきもあります。「自由と多様性を保証するセキュリティの技術こそ、産業活力を保証するもの」にはナルホドと思いました。ゲーム配信されている方や、実業家でお金の知識を配信されている方、VTuberとしてアイドル活動されている方などは、基本匿名でプライベートを確保しながら配信されています。多様性とセキュリティの両立ができる技術が生まれれば、新しい産業は生まれそうです。
不安定な時代に、どんな希望を持ったらよいのかなどのヒントに本書を読んでみてはいかがでしょうか。
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