パワハラ上司を科学する

※読んだ本の一部を紹介します。

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

はじめに

 大学院に進学し、パワハラに関する国内外の文献を探すところから研究を始めました。日本では、パワハラについて、ほとんど研究が行われていません。当時2008年ではまだ、全国でどのくらいの人がパワハラを受けているのかの実態調査も行われていなかったのです。

 10年以上にわたり、実証研究によって明らかになった科学的根拠を使い、全国各地の企業や自治体で管理者向けの研修や講演を実施してきました。

 そこで、感じることは「パワハラにならない指導の仕方に誤解がある」という点です。

 部下と仲が良く、パワハラにはなっていないだろうという管理職に会うことがあります。研究でわかっていることは「上司や部下の仲が良すぎたり、職場の雰囲気がくだけすぎたりしている職場では、パワハラが起こりやすい」ことです。

 パワハラのメカニズムを知ることで、部下との関わりが楽になり、パワハラをしない上司が増えることを期待しています。

書籍情報

タイトル

パワハラ上司を科学する

第1刷 2023年1月7日

発行者 喜入冬子

発行 (株)筑摩書房

制作 (株)新藤慶昌堂

著者

津野香奈美

出版

ちくま新書

個人に向けたパワハラ対策

作者: 静ほたる

 これまでに相談者から一番多くされた質問は、「どうしたらパワハラをしている本人に気付いてもらえるか」です。これは幻想にすぎません。人の痛みに鈍感な人は、自分の言動と行動が相手にダメージを与えていると認識できていないのです。「自分で気付いてもらう」という方法は、真っ先に外しましょう。

 文書で注意するは効果的です。○○という言動は、懲戒免職にあたります。など、はっきりと文章で残して提示すると良いです。抑止力になり、行動改善の動機付けになり、懲戒免職になっても事態を受けとめやすくなります。

 管理職への登用の際、性格傾向にパワハラ気質がないか確認しましょう。

  • 目的のためには手段を選ばない傾向があるか
  • 他者への共感力や良心が異常に欠如していないか
  • これまでに人をタダ働きさせたり、人の手柄を横取りしたりするなど、他社を不当に利用したことはなかったか

 これらのチェック項目を、周囲の人に質問するだけでパワハラ気質かどうかが確認できます。

パワハラモデル

AlexaによるPixabayからの画像

パワハラタイプ
●脱線型リーダー
●専制型リーダー
●放任型リーダー

 脱線型リーダーシップを発揮する人は、自分の利益のことを考えがちです。部下や組織にとって良いかを考えずに行動するため、適切にマネジメントすることができません。結果的に部下を操作しようとしたり、侮辱やイジメをするこのがこのタイプです。

 専制型リーダーシップは、自分の考え方ややり方を押し付けたりする典型的なパワハラ上司の形態です。部下は罰せられることを恐れてしまうので、恐怖政治になりやすくなります。この形態は1930年代から研究テーマとして登場しているほど歴史があるようです。厄介なことに、仕事が部下の犠牲で成り立っているにもかかわらず、組織の目標達成に貢献している場合があります。その場合は上層部から評価がされていることでしょう。

 放任型リーダーシップは、管理職のポストではあるものの、リーダーシップを発揮していないことです。ハラスメントを恐れて部下との関わりを持たない、部下がイジメを行っても知らんぷり、出張や会議で忙しく部下がいる職場を不在にしがち、部下をねぎらうことがない、などの特徴を持ちます。日本には放任型や消極的な上司が多いことがわかっています。

 職場にポジティブな影響をもたらすリーダーシップは「変革型」「交換型」です。

 変革型は、ビジョンやロールモデルを示し、部下1人1人に尊重することを忘れずに方向性を促す形態になります。

 交換型は、部下が期待通りの仕事をしている場合に報酬を与え、そうでないときは指摘するという形態です。

パワハラの進行過程

AlexaによるPixabayからの画像

 いじめやパラハラの多くは、何らかの些細なきっかけからスタートします。特にいじめは、最初こそ従業員間の意見の衝突程度だったものが、やがて周囲の人を巻き込み、行為がエスカレートするという性質を持っているのです。

 パワハラの進行過程には5段階あります。

段階進行過程
第一段階「不和」従業員同士で意思疎通などに衝突が発生する
第二段階「攻撃」従業員間で攻撃的な加害行為が発生する
第三段階「加担」管理者層が放置したり、加担したりする行為が発生する
第四段階「烙印」被害者は「気難しい」「精神疾患にかかっている人」と烙印を押される
第五段階「排除」被害者が自主退職、無断欠勤等を理由に解雇される

 こうしたパワハラの発生には、組織構造が関係しています。

 コロナ関連では、医療従事者が「ばい菌」扱いされることもありました。こうした人も、日常生活では「良い人」であることが多いのです。モラルがないわけでもありません。

 しかし、団結力が強かったり、同質性が高いと、異質なものを排除する力の強さにつながります。日本の場合は島国であるからか、「同じ日本人」として高い同質性が期待される傾向にあるのです。

 目立つ人や優秀な人は、和を乱す者として嫌われます。集団の規範に見合う水準にまで抑え込み、引き下げるという力が働いてしまうのです。

マレーシアのパワハラ判断

WalkersskによるPixabayからの画像

マレーシア版いじめ尺度
●職務外の仕事をするよう求められる
●職務内容とは無関係の不必要な仕事をするよう求められる
●過度な量の仕事をするよう求められる
●賃金なしで時間外労働をするよう求められる
●他の同僚がするべきであると思われる仕事をするよう求められる
●指導・助言なしで働くよう言われる
●締め切りを守るよう強いられる
●手助け無しに1人で働くよう言われる
●何か間違っていた時に、不当に非難される
●正当な理由なしに、叱られたり小言を言われたりする

 上記の日本の職場事情あるあるは、マレーシアでは100%パワハラであると判定されてしまいます。

 外国労働者にとっては、日本の働き方は魅力的とは限りません。外国人視点でパワハラ対策を勧めることは、労働者の数が激減する日本の企業のためにもなります。

 仕事内容がきちんと明文化され、無駄な作業がなく、適切な助言やサポートが得られ、賃金が適切に支払われる職場は、誰にとってもメリットなのではないでしょうか。

感想

サイト管理人

サイト管理人

 仲間意識が強すぎるとパワハラが起きやすいとのことでした。言われてみれば、納得できることです。

 より良いリーダーシップが「変革型」「交換型」であるとわかっているのであれば、会社などの組織のなかで、取り組めば良いという単純な話でもありません。

 「交換型」とありましたが、仲が良すぎると、正当に評価ができない可能性があります。

 「変革型」で取り組もうにも、仲が良すぎると、異なる意見を受け入れることができないかもしれません。

 勝手に仲間内で形作られた常識が、イジメや差別につながることもあると、勉強させていただきました。知らず知らずに、身の回りがパワハラ環境にならないように心がけようと思います。

 マレーシアのパワハラ基準が厳しく思えますが、働く人にとっては仕事内容が決まっているので、規律もありますし、ストレスも無いかもしれません。日本からマレーシアに移住する富豪層は、快適な思いをして過ごしている方も多いようです。

 深い内容だったと思います。

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