「いい会社」はどこにある?

※読んだ本の一部を紹介します。

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

はじめに

 結論として「万人にとっていい会社」というものは存在しません。なので、会社を客観的に評価し、自分にとって譲れないポイントを定め、優先順位をつけて、その時々で見定める発想が重要となります。

 働き始めないとわからないのでは、失敗したときの挫折感が大きいのです。入社後にショックを感じる新人社会人は、人材紹介会社による調査で76.6%に及び、その内容は、給料、昇進スピード、仕事の裁量、残業、休日など多岐にわたります。

 20代後半から30代半ばまでは、転職市場で、最も売れる時期、「売り手市場」です。選び放題なので、妥協する必要も、安売りする必要もありません。かつては35歳転職限界説もあったが、人材不足の影響で、実績と経験があれば40代でも転職しやすくなっています。

 これまで怠けて何も身についていない人は苦しいが、身につけたスキルを棚卸して、定年後を見据えた会社選びをしていただきたいのです。

書籍情報

タイトル

「いい会社」はどこにある?

自分だけの「最高の職場」が見つかる9つの視点

発行 ダイヤモンド社

ブックデザイン 小口翔平、畑中茜、後藤司(tobufune)

校正 鷗来堂、東京出版サービスセンター

作成進行 ダイヤモンド・グラフィック社

印刷 勇進印刷

製本 ブックアート

編集担当 藤田悠

著者

渡邉正裕

ニュースサイト『MyNewsJapan』オーナー、編集長、ジャーナリスト。

 働く人の立場で、雇用、労働問題の取材や執筆を行っています。

出版

ダイヤモンド社

ジョブ型vsメンバーシップ型

仕事内容を選択できるか?
 自分で仕事内容を選べるかどうかの基準は、雇用法制における「ジョブ型」と「メンバーシップ型」の違いを理解しなければなりません。

ジョブ型メンバーシップ型
組織形態機能体共同体
基本思想資本主義自由経済社会主義管理経済
採用配属先が予め決まった専門職採用配属先未定の新卒一括採用
雇用仕事がなくなれば解雇
別職種にコンバートすることはない
仕事がなくても判例法で解雇できない
少なく雇用し、非正規雇用でカバーする
給与決定方法職務給職能給
労働生産性上昇停滞
給与水準生産性向上に伴い、上がる横ばい
人事権社員に無断で、別の仕事が出来ない雇用以外は自由度が高く、やりたい放題
キャリア自律性高い低い

 日本の法体系は「メンバーシップ型」と呼ばれ、家族という共同体において親が京大や子どもを切れないように、企業が従業を簡単に解雇できないようになっています。その代わり、解雇以外の職種転換や転勤辞令を出してもOKとなっているのです。

 米国と欧州は「ジョブ型」になります。企業という、株主利益を追求する「機能体」においては、仕事が大前提としてあって、その仕事ができない人は組織からでていくべきだ、と合理的に考えているのです。不況や事業撤退でジョブが無くなれば、社員を切ってOKなので、大胆な人件費カットによる新しい成長事業に投資できます。

 日本の企業で「ジョブ型」を導入などのニュースは嘘です。給与を下げたりすると「労働条件の不利益変更」となって違法になります。高い給与が支払われ続け、なんらかの仕事が与えられるのはジョブ型ではありません。

拘束時間で計算する重要性

拘束時間になるもの
●通勤時間
●勤務時間
●休息時間
●残業時間
●アフターファイブ
●有給休暇消費日数の少なさ

 負荷を考えるうえで、拘束時間が納得できるかどうかが大切です。

 働いたことのある人なら、なんとなく理解している話ではありますが、数字で正確に把握できている人は、ほとんどいらっしゃいません。

 実働7時間45分、休憩45分で会社に拘束される時間を考えると、勤務時間、休憩時間、通勤時間、残業時間、飲み会などの時間で、だいだい1日13時間くらいになります。

 ほとんどの人は気づいていませんが、日本の通勤ラッシュは最高レベルの重労働です。飲み会、ゴルフ、運動会、バーベキューなどの業務外イベント参加することも、コミュニケーションには必要とされてます。新人は出し物や企画出しと内容が濃すぎる傾向にあり、飲み会では男性が全裸で吐いたり女性社員が勢いで上半身を脱ぐ人がいたり、ほとんどの若者が嫌いな社風なので拘束に該当することが多いでしょう。

 また富士通やパナソニックは平均残業時間実績すら開示しておらず、基本的な情報を隠しつつ、人権がどうのと語っていたりします。企業で働いたことない学生を取り込む気満々なのです。

 残業が平均「7.7時間」というのも、残業代が支払われている時間が7.7時間というだけなので、気を付けなければなりません。

「人間関係」視点で会社をみる

Gerd AltmannによるPixabayからの画像

会社の種類
●体育会系・軍隊のような会社
●傭兵スナイパー集団
●学生サークルのような社風
●個人商店・個人事業主

 永守重信氏が創業し、一代で世界一の総合モーターメーカーに成長させた日本電車は事業グループがあり、月2回の全体会議に、上級管理職以上が全員出席します。その会議の様子は「アホ」「死ね」「辞表を書け」などと、皆の前で、さんざんに罵倒するものです。この雰囲気が合う人には合い、合わない人に合いません。

 トップダウンの会社はまだあります。楽天です。有名なのは「楽天カード」加入営業ノルマ20枚で、これで追い詰められる研修生も多くいます。2012年には、TOEICの点数で減給する制度も突然作り、未だに給料の低い優秀な社員がいるとのことです。野村證券などは、住む場所さえ口出します。

 しかし、体育会系は、トップが厳しい規律を作り、完全にマニュアル化して末端まで統制できたほうが、顧客サービスが底上げされます。結果として、世界で勝てるのです。間違いないサービスが提供される一方で、働く側として、ピリピリしている職場になります。

 キーエンスやZARAは傭兵・スナイパー集団に当てはまります。社内で上司が部下を連れて飲み歩く行為は禁止とされていたりするのです。しかし、トップダウンなので、自分の意見は言えず、言われたことをやる会社になります。

 「ボトムアップ&ウエット」の組織は学生サークルの延長のような会社です。上司も部下も友達のような人間関係となり、「さん付け」で呼び合う傾向があります。

 称賛やご褒美で持ち上げて自主性でモチベを上げ、成果のない者にはドライに給料を下げ、去る者は追わないという「雇用流動化」が言われる現在、ボトムアップ型の会社に追い風が吹いているのは間違いありません。

 「ボトムアップ&ドライ」なカルチャーをもつのは、組織化する必要がない専門職系が集まって仕事をしていく業態です。独立色が強く、各職でフラットな関係になります。おかしなトップダウンの指示があれば、技能がある社員はスグに辞めて行ってしまうのです。

 会社との関係が個人商店的になる職業は、最も独立に近い働き方ができ、手に職がついています。開業医、弁護士、税理士をはじめ、多くの資格業もこのエリアです。

手取り賃金に納得できるか

FirmbeeによるPixabayからの画像

 手取りは、ローンの返済に回すことができ、消費せず貯蓄や運用に回すこともできるため、選択肢は多いのです。会社選びにおいては、「手取り」をメインとして考えるのが妥当になります。

 働く者の負担は年々重くなり、ここ15年で年収700万円だと手取り540万円→529万円に減りました。間接税の消費税が倍増ししているため、最終手取りは476万円です。我々はずいぶん貧しくなりました。

 手取り減の原因は、主に厚生年金と健康保険の保険料を引き上げたためです。超高齢社会で社会保障負担は重くなり続けており、今後も上がる可能性があります。2022年10月から雇用保険料が上がりました。理由はコロナ対策の財源を賄うためだといいます。こうして給与所得者は、容赦なく天引きされていくのです。

 年収200万円でも53万円を負担し、実際には年収146万円の生活を強いられています。低所得者ほど、貯蓄や投資に回せないため、消費性向が高いのです。「ラクはさせないぞ」という政府からもメッセージかもしれません。

感想

サイト管理人

サイト管理人

 分厚いけれど、単位をとって卒論と就活だけを残している学生時間に、読む事をオススメしたい一冊です。

 意欲的に新卒採用をしてくれるけれども、トップダウンで寿命が短くなりそうな社風に耐えられない人が、体育会系の企業に就職するべきではありません。クリエイティブでのんびりしたフリーランスでやっていくのも選択肢の1つです。

 時間、お金、人間関係、働き方、これらを自分が許容できるかどうかを考えて、企業を選択してほしいと思います。

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