格差の起源

※読んだ本の一部を紹介します。

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

はじめに

 社会の内部や社会間のはなはだしい格差の重大性を軽視するつもりはありません。

 貧困と不公正を緩和して人類全体の繁栄に寄与するには、どんな行動が必要かを誰もが理解できるようにしたいところです。

 人類の旅の根底にある大きな力は、この先も容赦なく作用し続けます。教育と寛容と男女の平等が今後の人類繁栄の鍵となるのです。

書籍情報

タイトル

格差の起源

なぜ人類は繁栄し、不平等が生まれたのか

著者

オデッド・ガロー

ブラウン大学経済学教授。

 「経済成長ジャーナル」の編集長を務める、「統一成長理論」の創始者です。

監訳者:柴田裕之

訳者:森内薫

出版

NHK出版

成長の時代

20世紀の技術発展
●核エネルギーの利用
●パソコン
●自動車
●飛行機
●ラジオ
●テレビ
●インターネット
●農作物の品種改良
●貿易の普及
●識字率の上昇

 20世紀に起こった技術発展と同時に、人類にとって不可欠の農作物の品種改良も行われています。トウモロコシ、稲、小麦、病気に強く収穫量の多いものが生まれ、世界中で飢餓が減りました。

 品種改良のおかげで、1960年代に穀物をメキシコは自国で賄えるようになったのです。

 インドとパキスタンでは、1965~1970年に小麦の収穫高が倍増し、1974年には穀物の自給自足が可能となりました。

 他の事例だと、革新は主に方式にまつわるものでした。1968年に国際標準化機構は、アメリカの起業家マルコム・マクリーンが設計した新しい複合一貫コンテナを、世界の標準規格として推奨したのです。この統一規格により、港での荷の積み降ろし作業が効率化され、貨物の輸送費用が劇的に減り、国際貿易の急成長が促されました。

 技術がここまで普及すると、人的資産形成の必要性が増してきたのです。1976~2016年に人的資本への投資が世界的に増え、世界中の成人の識字率は女性が61%→83%に、男性が77%→90%に上昇しています。

 初等学齢児童の不就学率は女子が35%→10%、男子が20%→8%に低下し、人的資本の獲得につなげているのです。

 人びとの生活水準が上がる一方で、人的資本の形成が進んでいた地域ではみな、出生率が落ちていたり、地球温暖化などの問題も起きています。

文化の変容

文化の影響
 文化は成長の過程や経済の繁栄にさまざまな形で貢献してきました。子育て、人的資本の形成、人口転換、政治、金融、社会、経済、どれも文化次第だったのです。斬新な発想や技術の発展などにも文化が影響してきました。

 ヨーロッパから来たアメリカに渡ったさまざまな移民集団は、故国で大切にしてきた文化的価値に沿う制度を立てました。

 クエーカー教徒が形成を支持した制度は、政府の役割を限定し、個人の自由を優先させ、協会と国を分離し、税率を比較的低く定めたのです。

 ピューリタンは、公共教育や住民坂を促したり、厳しい法や規制をかしたりする制度を確立し、高い税金でそのすべてを賄いました。

 スコットランドやアイルランドからの移民は、個人的な事柄に関して政府が介入することをあまり望まなかったため、個人の自由を守るような制度を築き、「フロンティア・ジャスティス」と呼ばれる臨時法廷で争いごとを解決し、武器を所持する権利を支持し、武器を所持する経理を支持し、税率を低く保ったのです。

 アメリカ社会を構成するさまざまな部門や、それにぞくする人々が好む制度の種類に、文化が見てとることもできます。

 決して偶然ではありません。

 不確かな環境で生き延びるために、栄えるために、世代を超えて価値観や信念が役割を果たしてきたのです。

地理とヨーロッパ

ヨーロッパの奇跡
 技術や文化の発展を阻む力を国が持っていた場合、隣国に移るという手段がありました。そして、競争が生まれ、技術革新を行う制度に適応する文化なったのです。
 ヨーロッパの複雑な海岸線は、多くの入り江や半島があり、貿易の発展や敵国の防衛を助け、商業と富が拡大する土台を築きました。

 クリストファー・コロンブスが新大陸への旅の費用をどう工面したかは、競争の性質をよく表しています。

 ポルトガル王ジョアン2世に嘆願して援助を断れました。ジェノヴァとヴェネチアでも資金調達を試みるも不首尾に終わっています。

 今度は大陸競争で遅れていたスペインにとりつぎ、インドを目指す旅絵への資金援助を獲得することができたのです。将来の利益の一部を与えることを約束し、旅の商業的成功に対するコロンブスの意欲を高めました。

先行者利益の消滅

なぜ、農業の影響力は消滅したのか?
 農業革命以前の時代の生産性には重大な影響を与えていたはずです。1500年以降その影響は弱まり、現代では1人当たりの所得にわずかな影響しか及ぼしていないことになります。
 今日にみられる豊かさの格差は、生産力だけでは説明がつかなくなっているのです。なぜ、有益な効果は過去500年のあいだで消失したのでしょうか?

 農業革命が起き、生産性と技術面で大きく向上しました。おかげで先進地域は経済発展の最前線に立てたのです。

 しかし、16世紀があけると、人的資本集約型の都市部が栄えるようになりました。新しい技術の発展に対する重要性が高まるにつれて、農産物の生産力は優位性を保てなくなっていったのです。

 都市化の進んだ国や海洋国家が開発した技術や金融手段によって世界貿易が円滑になり、植民地時代が始まったのに対して、農業部門に特化した負の影響はさらに強まっていきました。

 農業革命が起きた時期の違いは、世界各地域がそれぞれにたどった発展の過程を理解するうえで非常に重要です。農業革命以外の影響力も踏まえながら経済と結びつける必要があるでしょう。

感想

サイト管理人

サイト管理人

 多様性が繁栄をもたらすよう様な、潜在的な力があると考えているようです。これからの時代では、未来志向、教育、男女平等、多元主義、差異の尊重を進め、普遍的な繁栄を築くと、そう書かれています。

 主観が混じっていそうな部分を、「そうかもしれない」くらいの心持ちで読み進め、過去の事実を目で追っていく感じがとても面白かったです。

 インドに参入しようとする企業は非常に多く、醤油などの食品会社、VTuberなどの配信会社までも幅広く狙っています。差異が受け入れられ、繁栄が導かれる、なるほど「統一理論」だと理解しました。

 一方で、日本に輸出できないメッチャ旨いスパイスもあり、現地でしか食べられないカレーでなくなるもの寂しい気がします。統一したらしたでツマらない部分もあるなと感じました。

 面白い切り口でも格差を語ってくれる本を、読んでみてはいかがでしょうか。

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