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目次
書籍情報
2040年 半導体の未来
発刊 2024年7月2日
ISBN 978-4-492-50354-6
総ページ数 233p
小柴満信
JSR前会長
経済同友会経済安全保障委員会委員長
米シリコンバレー赴任。モトローラ、IBM、インテル等との関係を構築。2009年に社長、2019年に会長、2021~2023年名誉会長。
東洋経済新報社
- はじめに
- 半導体がかつてないほど”熱い”
- 「台湾有事」のインパクト
- 半導体の復活なくして、日本の未来はない
- ラピダス設立に集まった批判の声
- 第1章 日本半導体「失敗の本質」
- 私的・半導体摩擦体験
- 半導体の誕生
- 電卓戦争の勃発
- DRAMで躍進した日本
- インテル再生
- 国家プロジェクトは軒並み失敗
- ファンドリーの大頭
- 加速する微細化
- 気づけばたった3社に
- 巨大でなければ生き残れない
- 「ムーアの法則」の変調
- GAFAMのしたたかさ
- 中国から始まった「国産化」の動き
- 中国サイバーセキュリティ法の脅威
- 米国議会も早くから警戒していたが……
- ファーウェイのバックドア疑惑
- 米中半導体摩擦へ
- 半導体は戦略物資になった
- 「グローバリズムはほぼ死んだ」
- クラウド支出が止まらない
- 遅まきながら日本も動き始めた
- 9兆円の経済波及効果
- 日本半導体「失敗の本質」
- ものづくりにこだわりすぎた
- 水平分業へ回帰する可能性はあるか
- 第2章 ラピダスの勝算
- 「日本がいまさら半導体?」
- ラピダスとは何か
- 「いきなり2ナノメートルなんて無理」
- 日本の地政学的「優位」
- 2ナノメートルの世界
- 台風の目にくさびを打ち込める?
- 千載一遇のチャンス
- モア・ムーアからモア・ザン・ムーアへ
- 唯一無二の「シングルウェーハプロセス」
- リープフロッグは可能だ
- トヨタやデンソーが出資した「真意」
- エヌビディアの隘路
- MN-Coreへの期待
- 露光装置の確保にもメド
- 人材不足への対応
- 物理設計技術者の確保は課題
- 寄り合い所帯ではない
- ラピダスはオールジャパンではない
- 成功の逆襲
- リードユーザーイノベーション
- ダーウィンの海がない
- 第3章 半導体戦略としての「生産性革命」
- 『100年予測』との出会い
- 「歴史は循環している」
- テクノロジーが世界を動かす
- 米国の2つの長期循環
- 2つの循環が同時に終わろうとしている
- いまは「静けさの前の嵐」
- 次の長期循環を牽引する3つのテクノロジー
- 計算能直が上がると「生産性」も上がる
- 労働生産性にこだわりすぎた日本
- ビットの生産性
- 将来の進化を先取りする
- 久夛良木氏の先見
- AIの登場でブースト
- 未来を決定づける「量子の生産性」
- 第4章 半導体戦略がめざす「次世代計算基盤」
- 非ノイマン型半導体の衝撃
- 計算需要の爆発
- MECの可能性
- 生産現場も自動運転もスムーズに
- 「計算基盤」の確立が必要だ
- 次世代計算基盤を支える12の柱
- すでに量子コンピュータは稼働済み
- 和製ファブレスの創設が必要
- 誰も取り残されない社会へ
- ビッグピクチャーが必要だ
- 日本版PCASTを創設せよ
- ムーンショットを掲げよ
- 日本は圧倒的に有利
- 新シンクタンクに必要なこと
- 第5章 近未来を担う「量子」と半導体戦略
- 量子技術が開放されるとき
- 一発で解が出る
- ビットと量子ビットの圧倒的な違い
- 1万年かかる計算が数分で
- 国内でもようやく盛り上がってきた
- 日本は有利な立場にいる
- 量子コンピュータは国産化できる
- 自然や宇宙の「謎」の解明に近づく
- 量子で「第3次産業革命」が起こる
- 夢のエネルギー
- 日本の研究機関がプラズマ化に成功
- 量子インターネットによるコミュニケーション革命
- 量子は物流も変える
- 二酸化炭素からジェット燃料⁉
- アパレルが変わる
- バイオが世界を動かす
- 量子に資金が集まっている
- 量子が当たり前になる時代がもうすぐ来る
- 量子のハイプ・サイクル
- 2030年を超えて
- おわりに
- 「10:1」
- 若い人たちにこそ
書籍紹介
未来を見据えた半導体技術の革新
小柴氏は、半導体技術が2040年にどのように進化し、社会にどのような影響を与えるかを詳述しています。著者は、現在の技術トレンドや業界の動向を踏まえつつ、次世代の半導体がどのような形で登場するかを予測しています。これには、量子コンピューティングやナノテクノロジー、AIとの融合などが含まれ、読者にとって非常に興味深い内容です。
産業界へのインパクト
本書では、半導体技術の進化が産業界全体に与える影響についても詳細に説明されています。自動運転車やスマートシティ、IoT(モノのインターネット)など、さまざまな分野での応用が考えられます。小柴氏は、これらの技術がどのように社会を変革し、新たなビジネスチャンスを生み出すかについて具体的な事例を挙げています。
グローバルな視点
また、グローバルな視点から見た半導体産業の未来についても触れています。米中貿易戦争や技術覇権争いなど、国際的な政治経済の動向が半導体技術に与える影響についての分析は、非常に鋭いものがあります。これにより、読者は半導体技術の未来を単なる技術的進歩としてではなく、広範な社会的・経済的文脈の中で理解することができます。
ビジネスチャンスを逃さない
「2040年半導体の未来」は、技術者やビジネスリーダー、学生など、半導体技術に関心を持つすべての人々にとって貴重なリソースです。未来を予見し、新たなチャンスを捉えるための指針となることでしょう。
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
水平分業へ回帰するか?
米中の緊張状態が急に和らぎ、水平分業に戻る可能性はあるのでしょうか。いずれ両国が戦略を変更する時が来るはずです。
1990年の日米半導体摩擦が示すように、米国は自国への脅威に対して過剰に反応することがあります。しかし、後に米国は日本の半導体業界を友好的に受け入れる態勢に変わりました。
米国も中国も、大国同士の衝突のコストを理解しており、双方ともに衝突は避けたいのが本音です。現在は厳しい輸出規制が行われていますが、政府高官同士の対話は続いており、イーロン・マスクやビル・ゲイツなどは中国との交流を続けています。
日本の地政学的「優位」
IBM社内で2ナノメートルの半導体の開発に成功し、新たなファウンドリーの探しを始めました。
おそらく、IBMの最初の選択肢はサムスンだったでしょう。IBMはサムスンと協業した実績があります。しかし、地政学的なリスクを無視することはできません。
その点、日本は中国や北朝鮮と日本海や東シナ海を隔てた位置にあり、台湾や韓国と比べて地政学的なリスクが少ないです。また、世界的なサプライヤーが存在し、ものづくりや量産技術に定評があります。日本に注目する背景にはこれらの理由があります。
AIでブースト
AIを活用し、経営戦略に取り入れた企業は、年間30%から40%の成長が見込まれます。米国では、多くのベンチャー企業がAIを活用して大きな成長を遂げました。
2019年の米国IPO市場では、上場した企業の85%がAI関連企業です。その多くは2009年前後に設立されました。
AI時代の到来を自らの事業戦略に取り込んで成功した企業が増えています。おそらく、2007年以降のリーマンショック後、金融業界にいたITの専門家がレイオフされ、多くがGAFAMに就職したり、自ら起業したことが背景にあるでしょう。
国土という考え方
日本のGDPが世界4位に落ちたことが大きく報じられていますが、1㎡当たりで見ると全く悲観することはありません。これほど狭い国土でこれだけのGDPを誇っています。
経済密度が高く、テストベッドを実施する際にも効率が良いのです。首都圏とその周辺のベッドタウンを考えると、コストパフォーマンスも高くなっています。
国土が広いと、気軽に実験を行うという雰囲気にはなりません。5Gの実装コストは世界で100兆円かかるといわれていますが、アメリカでは30兆円、中国では20兆円かかるところ、日本では3兆円です。
20世紀に構築されたインフラがしっかりしており、新しいインフラを作るコストも安いという特徴があります。