※ 毎朝、5分ほどで読める書籍の紹介記事を公開します。
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
目次
はじめに
商業化、産業政策、投資誘致、輸出促進、これら開発に関わる問いに答えようとする学問が国際開発論です。
世界の人々の生活水準は平均的に見れば長足の進歩を遂げています。南アジアやアフリカの貧困層でも携帯電話を持っていることが普通です。都会に出稼ぎに行った夫から送金してもらうために、妻も携帯電話を持っています。
中国やインドの貧困削減が顕著であり、東アジア諸国の高所得化も見てとれます。
しかし、「理不尽な悲惨さ」はまだ世界の多くの場所に影を落としており、国際社会はどのように向き合っているのでしょうか。それらが本書の課題です。
書籍情報
入門 開発経済学
山形辰史
日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員などを経て、現在、立命館アジア太平洋大学アジア太平洋学部教授。元、国際開発学会会長。専攻・開発経済学
中公新書
開発経済学は終わりではない
クルーグマンは「開発途上国のみに適用することを前提とした開発経済学」はその役割を終えたと考えています。オイルショック以降、先進国と発展途上国は同一のお直面することが多くなり、欧米先進国にキャッチアップする国々が現れたことから、従属論者が懸念したような二極分化は起きていません。発展途上国のみに向けられた経済学は必要ないのかもしれません。
しかし、開発途上国が貧困層の生活水準を向上させるために生産物の競争力を高め、生産発展を進めるための経済学、地球環境の持続性を保つための経済学は、現在も求められています。
不利な立場の子ども
Image by billy cedeno from Pixabay
幼児期の労働を行う必要があったとしても、副次的で健康に悪影響が及ばない程度にとどめておくべきと、現在では多くの開発途上国で共有されています。
そのため、初等教育就学率は低所得国であっても、男女とも100%に近づきつつあるのです。
健康に悪影響を及ぼす労働とは、有害物質(硫黄、アスベスト、ベンジン、火薬、殺虫剤、除草剤)を扱うこと、人身売買などの強制労働や性産業が含まれます。これを児童が従事しているのです。
2012年には1億6800万人、2016年には1億5160万人と、児童労働は減少傾向にありましたが、2020年には1億6000万人に増加しています。
危険有害物質に定められた労働に従事する子どもも8000万人前後を推移しているようです。
バングラデシュでは住み込みで働き虐待を受けることもあり、インドでは綿花の収穫、ガーナやコートジボワールではカカオ豆を取り出す児童労働に、子どもが動員されています。
一方で、法で児童労働を禁止し、子どもが学校へいくための支援をする対策があるのです。例えば日本の森永製菓では生産工程の全てから児童労働をなくし、フェア・トレードを公表しています。
開発途上国向けワクチン
UnsplashのMufid Majnunが撮影した写真
エイズ、結核、マラリアは世界三大感染症と呼ばれ、今世紀初めにはそれぞれの病気で毎年100万人以上の人が命を落としていました。低所得者層がワクチンを買わないのには、わざわざ費用を払ってまで予防することの意義を理解できないという背景もあります。
2019年にノーベル経済学賞を受賞したマイケル・クレマーは2000年代初めに「ワクチン買い取り補助金事前保証制度(AMC)」を設計しました。AMCは、製薬会社が開発に乗り出さないような感染症のワクチン開発に対して、援助機関がワクチン購入国に援助を行うことにより、製薬会社に対して間接的に開発インセンティブを与え、ワクチン開発を促す仕組みです。
開発されたワクチンの有効性と安全性はWHOが確認し、ワクチンの配布にはUNICEFが協力し、資金のやり取りには世界銀行が協力します。
このAMCというスキームは、新型コロナウイルスに対するワクチン開発にも応用されたのです。
何のために国際協力するのか
Image by Céline Martin from Pixabay
私たち日本人は何のために国際協力するのでしょうか。
よくある理由として挙げられるのは、他者に対する共感、道徳的責任、回り回って行った援助が利益になるといったことです。
「自己利益」目的のためと解釈されることを心配しています。道徳的な動機が先にきていることを明示的に語られないことも多いのです。
日本国民のためというのであれば、政策で行うべきであって、国際協力政策の目的にする必要はありません。
日本の中小企業振興や地域経済振興を図るのとは迂遠です。同じに語られることで透明性をかきがちなので、望ましくありません。
国際協力に携わっている人には、率直な思い、助け合い精神や道徳的責任といった基本的な動機を、もっと口に出してほしいのです。
おわりに
現代社会にも、理不尽な悲惨さは残っています。紛争地では、古典的な武器から最新兵器のドローンまで動員して、命のやり取りが行われています。新型コロナウイルスのワクチンや医薬品は、低所得国の貧困層にはなかなか届きません。
多くの低所得国では労働環境が不衛生だったり、危険だったり、労働災害保険制度が無かったりします。
国際協力においては「理不尽な悲惨さ」の解決を一義とするものが望ましいのです。国際開発の目的の中心におくべきではありません。
感想
サイト管理人
こういった支援と、経済的な利益や利己的な益と結びつけるのは違和感があったので、ここまでハッキリと経済効果と関係ないと記述してくれることでスッキリしました。
ノウハウを語ると同時に、成功者には寄付する人が多く、私も無理して真似してみたところ~、と経済と結びつけた結論を語る人がいますが、読んでる読者からすると「どういうこと?」となります。自分がやっている行動の理由付けが、他人からみて理解しがたいものになってしまって、説得力がなくなっている例です。
支援は、やっぱり道徳以外のなにものでもありません。望まない妊娠で生まれた子どもが、現物支給の支援物資まで母に奪われるということもあります。支援が子どものためにならないこともあるようです。それでも、酷い環境に生を得た子どもを応援したいからこそ、募金をするものだと思います。
自分のためだというなら、投資信託に金額を投資したほうが利益になるのです。
恵まれない環境への募金などは、個々の道徳心で判断してほしいと思います。
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