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目次
書籍情報
弱者男性1500万人時代
発刊 2024年5月1日
ISBN 978-4-594-09741-7
総ページ数 239p
トイアンナ
ライター・経営者。ブログが最大月50万PVを記録し、2015年に独立。主にキャリアや恋愛について執筆。
扶桑社
- はじめに
- 弱者男性とは誰のことか
- 日本人の8人に1人は弱者男性
- 弱者と自認する男性は1600万人
- キモくて金のないおっさん
- 「弱者男性」の歴史的背景
- 国内統計データから見る未婚男性の不幸度
- 諸外国との比較
- 日本で男に生まれたら不幸、さらに未婚はもっと不幸
- 諸外国でもシングル差別はある
- 就職氷河期が破壊した男性の結婚願望
- 透明化される被害経験
- 支援団体が定める「弱者男性」の定義
- 男性の弱さ
- 男性は死にやすい
- 男性は病院へ行くのを渋り、セルフネグレクトへ
- 男性は3K労働に就きやすい
- 男性は戦場で兵士になりやすい
- 男性は女性よりも殺されやすい
- 男性のASD・ADHD・LDのなりやすさ
- 男性は遺族年金で差別されやすい
- 弱者男性の声
- 「男たるもの」に苦しめられ、双極性障害、事故破産へ
- 一見エリートでも、家族起因で弱者側に追い込まれる男性
- 年収1000万円のハイスペでも男性が「生きづらい」理由
- 妻から皿を投げつけられ、涙が止まらなくなった
- ごくわずかな弱者男性だけが、女性差別をする
- 弱さを認めてもいいと知って、救われた
- 弱者男性の分類
- SPA!でのアンケートをもとに弱者男性を分類
- なぜ弱者男性は自分を責めるのか
- 弱者性の主なカテゴリー
- 弱者男性になってしまう
- 弱者性を生む「家族・地域・制度」からの縁切り
- コミュニケーション弱者の男性は迫害されやすい
- 男性は女性と比べて「加害者」になりやすく、孤立しやすい
- 弱者男性を救いたいと思う者がいない
- 社会で失敗したときに復活しづらい
- SNSで生まれた「高み」の虚像が生む「弱者という実感」
- 弱者と認めてもらえない
- 女性・子どもという「理想的弱者」の存在
- 「かわいそうランキング」の最下位
- 収入という「目に見えすぎる上下関係」
- 弱さを語ることは「男らしくない」
- 自分でも自分を弱者と認めたくない
- 軽んじられる男性の被害
- 弱者から抜け出せない
- ガラスの天井に阻まれる女性、ガラスの地下室に落ちる男性
- 日本人男性の異常な労働時間、労働条件
- 体を売っても貧困から抜け出させない
- 階級の固定化:貧困家庭が貧困弱者男性を生む
- 新卒一括採用で失敗したら復活できない
- 独身男性が「介護する息子」になる
- 男性には「玉の輿」のチャンスがない
- 頂き女子のカモにされる?
- 宗教も政治も弱者男性を助けてくれない
- 弱者男性とミソジニー
- 弱者男性=ミソジニストであるという誤解
- 「それもこれも女が悪い」神話
- 女性険悪集団「インセル」
- 女性の社会進出と弱者男性に関係はあるか
- フェミニズムと弱者男性の食い合わせの悪さ
- 弱者男性の現状は、かつての女性の姿と重なる
- 弱者男性に救いはあるか
- サバルタンは語れない
- 今ある自助グループの限界
- 3つの縁のうち「行政」をつなぐ
- 支援の原則
- 「弱者です、助けてください」と言いやすい社会づくり
- 助けを求めるコミュニケーションの訓練
- 自分が執着する相手との会話
- 支援者の支援:バーンアウト対策
- 最後に、弱者男性が訴えた「本当にほしい支援」
- おわりに
書籍紹介
1. 書籍の概要
『弱者男性1500万人時代』は、経済的困窮や社会的孤立、そして生きづらさに苦しむ多くの男性たちにスポットを当てた一冊です。著者のトイアンナさんは、ジャーナリストとして数々の取材経験を持ち、鋭い洞察力で社会の暗部を明らかにしてきました。本書でも、その経験と視点が遺憾なく発揮されています。
2. 主なテーマと内容
本書の主なテーマは、現代日本における「弱者男性」の存在とその背景です。経済的な格差や家庭環境、教育制度の問題など、様々な要因が絡み合って形成される弱者男性の姿が描かれています。また、彼らが直面する日々の困難や社会からの疎外感に焦点を当て、その声なき声を社会に伝えることを目的としています。
具体的には以下の内容が含まれています:
- 経済的困窮:非正規雇用や低賃金労働に従事する男性たちの実態
- 社会的孤立:人間関係の希薄化と孤独死の増加
- 教育と就労の問題:学歴社会の影響と職業選択の難しさ
- 家族と結婚:結婚できない、あるいは結婚を諦める男性たちの心情
- 社会的支援の不足:行政や民間の支援策の現状と課題
3. 著者のメッセージ
トイアンナさんは、弱者男性の問題を単なる個人の問題ではなく、社会全体の構造的な問題として捉えています。本書を通じて、読者に対して「この問題にどう向き合い、どのような解決策が考えられるのか」を考えるきっかけを提供しています。
彼女のメッセージはシンプルですが深いです。「弱者男性1500万人時代」を迎えた今、社会は彼らを見捨てるのではなく、共に歩む道を模索すべきだと訴えています。
試し読み
※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。
日本人の8人に1人は弱者男性
急激な社会情勢の変化により、「一億総中流」と言われた日本は過去のものとなりました。2018年のデータによると、日本人の6人に1人が世帯年収127万円以下の貧困状態にあります。さらに、100人に1人の日本人は1日210円未満で生活しています。「弱者男性」という言葉は、こうした社会の変動の中でインターネットから新たに生まれました。
弱者男性とは、日本社会において独身、貧困、障害といった「弱者の要素」を持つ男性たちを指します。また、年収2000万円の男性でも、その大半を妻の圧力で失い、経済的自由が全くない場合も弱者男性と見なされます。
日本には最大1504万人の弱者男性がいます。2022年時点で日本の総人口は1億2494万7000人で、そのうち男性は6075万人です。つまり、男性の約24%が何らかの弱者性を抱えています。弱者男性は決して少数派ではなく、日本人の8人に1人が該当します。
男性の発達障害のなりやすさ
ADHDは、一つのことに集中するのが難しいという特徴があります。
ASDには、自閉症、高機能自閉症、アスペルガー症候群などが含まれます。これらの障害では、特定の事柄に強いこだわりを持つことが特徴です。また、相手の表情を理解してコミュニケーションを取ることが難しく、空気を読むのが苦手なため、人間関係で苦労することが多いです。
LDは、全般的な知能発達には遅れが見られないものの、「読む」「書く」「計算する」といった特定のスキルが極端に苦手であることが特徴です。
発達障害の男女比は約3:1で、男性の方が発達障害を抱えやすいとされています。発達障害を持つ男性は、年収や社会的地位が低くなる傾向があり、これがQOL(生活の質)を損ねる要因となります。幸福度は所得、職業、健康と関連しているため、発達障害を持つ人は幸福度が低くなりやすいのです。
自分を弱者と認めたくない
何事もインターネットに書いて生きている私でも、家庭環境や持病など、自分が抱える弱さを否定したい気持ちは強いです。「男らしさの呪縛」を抱える男性なら、なおさらそうでしょう。
日本では、ホームレスの人でも住居を借りられる仕組みが増えています。しかし、住居を借りた人が脱走してしまうケースが後を絶ちません。
生活困窮者一時宿泊施設や一時生活支援を利用したことがあるホームレスの人たちは、今後の生活について「今のままでいい」と答えることが多いようです。若い人は自立して生活したいと考える割合が高いですが、年齢が高くなるほど、ホームレスのままでいいと答える割合が増えます。ホームレスのほとんどは男性で、全体の平均年齢は63.6歳となっています。
かつての女性の姿と重なる
かつて女性がビジネスの場から排除されていた状況と同じように、現在では弱者男性の現状が重なるように思えます。
かつての社会では、女性は誰にでもできる雑務に追われ、重要な決定は男性だけの会議で行われ、女性はただ指示された業務を黙々とこなす姿が問題視されていました。
家庭の事情に合わせた働き方が求められる中で、女性は「女性向けの仕事」として限定された役割を押し付けられ、働きたい女性の希望は無視されてきました。しかし、現在では女性の社会的地位は改善され、男性と同じような労働条件を望む女性にも十分な仕事が提供される社会になりつつあります。
だからこそ、今度は弱者男性の待遇改善にも目を向けるべきではないでしょうか。
弱者男性を見捨てることは、経済的にも合理的ではありません。人口の約8人に1人が弱者男性であり、その多くが就労意欲を持っています。勤勉でありながら、高賃金の仕事が強者男性によって独占され、低賃金に甘んじている者が多いのです。この状況は国としても無視できない問題となっています。
「まったくの透明な存在」ではなくなった今、弱者男性の社会的地位の改善は進んでいますが、それでも完全に解決するにはまだ何十年もかかるかもしれません。