物価とは何か

※読んだ本の一部を紹介します。

※そのままの文章ではありませんが、試し読みする感覚でお楽しみください。

はじめに

作者: DR_AC

 物価は蚊柱です。

 緩やかに価値が変動する商品、激しく変動する商品、それら商品の群れから少し距離をとって眺めてみると、群れの全体像が見えてきます。ちょうど蚊柱というひとつの物体があるように、これが物価となります。

書籍情報

タイトル

物価とは何か

第1刷 2022年2月1日

発行者 鈴木章一

発行 (株)講談社

著者

渡辺努

東京大学大学院経済学研究科教授。株式会社ナウキャスト創業者・技術顧問。キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。ハーバード大学Ph.D.。専攻はマクロ経済学。

出版

講談社選書メチエ

お買い物ゲーム

UnsplashFranki Chamakiが撮影した写真

 スーパーで昨日と同じ商品をそれぞれ同じ量を買おうとしたら、何らかの値段が変わっていて、買い物総額を最小限に抑える商品選びを工夫する必要がでてきます。

 昨日1万円で済んだ買い物が、今日は1万2000円かかってしまったとしたら、物価上昇は1.2倍です。

 「昨日と同じ効用を得ようとしたときに必要となる最小限の支出」、実は、これこそがいま一般的に使われている物価の定義です。これを「生計費指数」と呼ばれたりしています。

 「生計費指数」が上がるのがインフレであり、下がるのがデフレです。

インフレもデフレも気分次第

UnsplashKrzysztof Hepnerが撮影した写真

 インフレもデフレも、私たちの生活を混乱させるので望ましくありません。できることなら避けたいと誰もが願っています。

 インフレやデフレの動きを決めているのは、貨幣への需要と、その背後にある貨幣の魅力です。

 今日の物価は、今日の貨幣の魅力に左右されるということになります。

 貨幣の魅力が将来どうなるかは大事なことなので、人は知恵を絞って「予測」するのです。未来の予想にはどうしても不確実性が残るので、貨幣の魅力が揺らぐのは避けられません。この揺らぎが物価の変動となるのです。

 企業経営者や消費者が、景気が良いと思って強気に行動すれば、結果として景気が良くなります。彼らが将来を悲観すると、支出が慎重になり景気も悪くなのです。

 つまり、景気を決めているのは人々の気の持ちようという意味になります。

消費者はステルス値上げに気付いていた

Image by Robert Owen-Wahl from Pixabay

 SNSをみると、小型化は消費者を騙すためのものであるかのようなニュアンスの投稿が目につきます。

 はたして、思惑どおりに消費者は騙されているのでしょうか。

 シャンプーの実質値下げに気付き、購入量を減らす消費者がいます。この消費者は容量が減少していることを把握していませんので、使い切る時間が短くなるのです。このタイプは8割です。

 シャンプーの実質値下げに気付き、そして容量の減少を考慮しながら購入する消費者もいます。このタイプは1割です。

 9割が値上げを感じているという結果なので、ほとんどの消費者は実質値上げを見抜いていたということになります。

 実は、米国人を対象に類似した実験をすると、小型化に気付かないという結果が報告されています。日米で注意深さが大きく異なるのです。

日本の金融緩和

UnsplashEtienne Martinが撮影した写真

 現在の日本では、2013年以降の日銀による超金融緩和が進行しています。日銀は人々のインフレ予想のコントロールが成否のカギを握ると強調していました。

 国民が景気の上向きを意識するようになれば、インフレ率の上昇につながるからです。

 金融緩和で失業率を改善したり、賃金や物価を上昇させたり、ということをせずにすみます。

 ですがこの政策による国民の反応は芳しくありません。景気の意識なのではなく、日本人の固定概念が物価を固定しているのではないかと、日銀内でも出てきています。

 今後の展望において、不安定な物価の犠牲になっている人たちを救うことが大事です。学術的な整合性などに問わられることなく、新しい挑戦も必要になります。そうした挑戦から、新しい物価理論が生み出される可能性は大いにあるのではないでしょうか。

あとがき

 物価は私たちの身近にあるのものです。サンマが不漁になると値段が上がるので、食卓にのぼる回数も減ってしまいます。生活そのものといってもいいかもしれません。

 物価が上がるとか、下がるとか、本来こうあるべきだとか、政府や日銀は物価に対してこういう政策を取るべきだとか、様々な意見の多くは、直観にもとづくものです。

 本書を読む進める中で、皆さんがもっている直観に反することが本書のあちこちにあったはずです。その反応を否定することが目的ではありません。演劇の評論家が演者を育てることもあります。経済学者がもつ知見の中には、直観を超えた気づきを与えてくれるものがあるのです。皆さんの直観をさらに豊かなものにすること、これが本書の目的となります。

感想

サイト管理人

サイト管理人

 たくさんの人がお勧めする理由がわかります。

 わかりやすいし、面白いです。さらに、時間が経ったいま読んでも理解できる凄さがあります。

 比喩も「なるほど」と思えるものになっていました。

 物価の深い知見に触れて、物価に対する気づきを得てみてください。

 間違いなく、オススメできる書籍です。

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